目と脳のこの盲点に、あなたは気がつきましたか?
目は生理学的、発生学的にみても、「目は脳のつづき」といわれています。
まずは「脳」が発達し、そこから”触手のように”外の世界へと脳が延長していき、
伸びていったものこそが、「目」と考えられるのです。
脳の一部の臓器が「目」になる
なぜ、目が「脳の延長」と考えられるのかは、眼球の構造を、ひとつひとつ見ていくとわかります。
眼球の内側から順に、まずは、外界からの光を投影する”フィルム”にあたる「網膜」。
そして、その外側にあって、血管がびっしりと張り巡らされている「脈絡膜」。
さらに、一番外側にあって眼球を守ってくれている、白くて丈夫な「強膜」の
3層です。
じつは「網膜」は、「脳そのもの」です。
網膜には、「視細胞」と「神経線維」が縦横に張り巡らされているからです。
脳にも、同じように、「神経細胞」と「神経線維」がびっしりと存在しています。
これが、目と脳がつながっている証拠です。
そして、毛細血管がはりめぐらされている「脈絡膜」は、
脳をラップのように、やさしくつつんでいる「脳軟膜」にあたります。
「脳軟膜」は、脈絡膜と同じように、血管に富んだ”うすい膜”で、脳のすぐ外側をおおっています。
一番外側の、白くて丈夫な「強膜」は、「脳軟膜」のさらに外側をおおっている、
丈夫で厚い「脳硬膜」に相当します。
脳の”自動修正機能”とは?
脳には、「見え方の不具合」を自動的に修正する機能がそなわっています。
しかし、脳が修正してくれるものは、それだけではありません。
◆ 脳の「両眼視機能」
「両眼視機能」とは、左右ふたつの目でとらえた”微妙に異なる映像”を、
脳が、”ひとつの見やすい映像”に修正するはたらきをいいます。
脳にある「両眼視機能」のおかげで、わたしたちは、左右ふたつの目でとらえた
”わずかに異なる映像”を統合し、「立体感」、「遠近感」のある見かたができるのです。
◆ マリオット盲点
「マリオット盲点」とは、だれにでも存在する、”生理的な視野の欠け”です。
網膜の「視神経乳頭」の部分は、言ってみれば「ぽっかりとあいた穴」。
ここには、ものを見るための「視細胞」が存在しません。
そのため、ここにうつった映像は、認識できないのです。
ここで簡単な実験で、あなたも「体験」できます。
マリオット盲点とは、視野のなかにある「唯一、見えない部分」のことです。
網膜にある「視神経乳頭」の部分には、網膜(視細胞)がないため、ここに映像をうつすことはできないのです。
マリオット盲点」とは
マリオット盲点とは、視野のなかにある「唯一、見えない部分」のことです。
網膜にある「視神経乳頭」の部分には、網膜(視細胞)がないため、
ここに映像をうつすことはできないのです。
網膜に何億個とある「視細胞」で変換された電気情報は、同じ網膜上に無数に走っている
「神経線維」をとおって、最終的に「視神経乳頭」の部分に集められます。
つまり、視神経乳頭は、外界からの映像をうつすスクリーンではないわけです。
「視神経乳頭」で、すべての神経線維がたばねられ、1本の太いケーブル「視神経」となります。
視神経には、脳に電気情報をおくる役目があります。
わたしたちが普段つかう「盲点」ということばは、この「マリオット盲点」からきています。
マリオット盲点は、「片目」になったとき、初めてその存在を確認できます。
両目になると、ふしぎなことにマリオット盲点は姿を消してしまうのです。
その理由は、脳の両眼視機能が、片ほうの目にある「マリオット盲点」を、
もう片ほうの目の映像を参考にして補ってしまうからです。
「マリオット盲点」の確認
マリオット盲点は、片目になってみることで確かめられます。
下のイラストで実験してみましょう。
マリオット盲点は、網膜の視神経乳頭に対応する部分。
左右ふたつの目から出ている視神経は、内側にむかって交差します。
そして、交差しやすいように、視神経乳頭は、網膜の「やや鼻側」にあります。
じつは、網膜に映る像は、水晶体の「凸レンズ」の作用によって反転します。
そのため、視野の「やや耳寄り」に、「マリオット盲点」はあらわれます。
それでは、あなたの左目にある「マリオット盲点」を確認してみましょう。
まず、画面から40センチほど離れます。
そして、左目だけで十字を見ます。
このとき視力検査の要領で、右目は手のひらでおおうだけにして、閉じないようにします。
この状態で、左目の正面に、「右の黒の点」がくるようにします。
左目の視線は実験中、「黒の点」を見つめたままにし、動かさないようにします。
そして、左目をこの「黒の点」に固定しながらも、左側にある「十字」を、なんとなくでも意識するようにします。
この状態で、少しずつ画面に近づいていきましょう。
どうですか?「十字」が消える瞬間があるはずです。
これが、あなたの「マリオット盲点」です。
さらに近づくと、「マリオット盲点」のポイントから抜け出して、ふたたび「十字」があらわれてくるはずです。
「マリオット盲点」と背景の修正
上の実験で、「十字」が消えたとき、その部分が「白くぬりつぶされた」はずです。
これは脳が、周囲の「背景色」を参考にして、擬似的につくりあげた色です。
下の二つのイラストでも、同様に実験してみましょう。
「ピンクの丸」が見えなくなったとき、その場所が、「背景と同じ色」に塗りつぶされたはずです。
同様に、黒い背景では黒に、赤い背景では赤に塗りつぶされます。
脳は「両眼視機能」以前に、”片目だけでも”、映像の補完や修正を行なうことができるわけです。